面《めん》、俗に般若《はんにゃ》の面と称するものでしたから、手に取り上げて勘八はおどろきました。思いがけないところに、思いがけないものが落ちていた。しかし、子供へのみやげには何よりだと、手に取り上げて見ると、ゾッとするほどのものすごさを感じました。
これは作《さく》のいいせいだ――と勘八もなんとなくそう思って、つくづくながめると、いよいよすごくなってくるので、これはトテモ[#「トテモ」に傍点]子供のおもちゃ[#「おもちゃ」に傍点]には向かないわいと思いました。とにかく、捨てておくよりは、ひろって帰ったところで、誰も咎《とが》めるものはなかろう……と勘八はそれを大事に持って帰って、とりあえず月見寺へ立寄りました。
そうして般若の面《めん》をひろって来たと大声で披露すると、どこにいるのだか、暗いところから弁信の声で、
「勘八さん……般若の面をおひろいなさいましたか、それは結構でございます。般若とは六波羅蜜《ろくはらみつ》の最後の知恵と申すことで、この上もなく尊《たっと》い言葉でございますそうですが、それが、どうして恐怖と嫉妬を現わす鬼女《きじょ》の面の名となりましたか、不思議な因縁でご
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