#ここで字下げ終わり]
と書いてありました。何のつもりで、こんな文句を書き出したのか知ら。その次を読んでみると、やっぱり同じように、
[#ここから2字下げ]
花は散りても
春は咲く
[#ここで字下げ終わり]
次へ次へと読んで行っても、どこまで読んでも同じ文句です。
その手紙がぼーっと白け渡った時分に、あちらを向いていた女が、こちらを向いて、
「あなた、お眼はいかがでございます」
突然にこう言って、暗い燈籠の蔭からたずねました。
「相変らずいけないよ」
女があまりなれなれしく言ったから、それで竜之助も砕けた返事をしました。
「まだいけませんのですか、困りましたね、早くお癒《なお》しなさらなくてはいけません」
「癒るものか」
それは冷罵《れいば》の語気であります。
「癒らないことはございますまい」
「癒るものか」
いよいよ冷淡にハネ返すと、女は何を思ったか、
「それでは仕方がございません、早くあの峠を越えてしまいましょう、あの峠を越えないと、どうも心配でなりません、こうしていても眠れませんもの」
「あの峠とは?」
女の指差したところを振仰いで見ると、それは前にながめた小仏の峠
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