、浅川宿の小名路《こなじ》でございます」
「それならば、行燈に書いてあるこなや[#「こなや」に傍点]が間違いないのだろう」
「いいえ、こなや[#「こなや」に傍点]ではございません、小名路の花屋でございます。いったい、どちらからおいでになりました」
「江戸の駒込から来た」
「駒込はどちら様で」
「以前、当家の養女であったという、お若という人を連れて来た」
「まあ、お若さんがおいでなすったそうですよ」
 家の中が、さざめき渡りました。そこで、はじめて中から戸がガラリとあくと、立っている女は透きとおるほど鮮《あざや》かな着物を着ています。
「よく、おいでになりました、さきから、こうして、明りだけは、かんかんと点《つ》けてお待ち申しておりました、あまり遅いものですから、戸だけは締めておきましたが、まだみんな起きているのでございます、さあ、お通り下さいませ」
 案内をしてくれたその女は、また見覚えのある女であります。振返って見ると、そこに置き据えられた駕籠は、もうありません。
 案内された座敷は、昨夜と違って明るい座敷でありました。朱塗りの雪洞《ぼんぼり》が、いくつも点いて、勾欄《こうらん》つき
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