。
「十九……名は何というのだ」
「藤と申します」
「なんで、この夜更けに独《ひと》り歩きをする」
「御信心に参りました」
「どこへ行った」
「杉の森の稲荷様へ願がけに参りました」
「何の願がけに」
「それは、兄が病気でございますから」
「その兄は幾つになる」
「あの……二十歳《はたち》でございます」
「この夜更けに、丑《うし》の刻参《ときまい》りをするほど、その兄が恋しいのか」
「エ……」
「このごろのような物騒な夜道に、しかもこの淋しい柳原の土手を若い女、たった一人で出かけたのを、お前の親たちは承知か」
「いいえ、誰にも内密《ないしょ》でございます」
「そうして、お前は死ぬほどにその男が恋しいのか」
「何をおっしゃるんでございます、どうぞ、お助け下さいまし、ここをお放し下さいまし」
「本当のことを言え」
「それが本当でございます、決して嘘を申し上げるような者ではございません」
「嘘だ、お前は淫奔者《いたずらもの》だ」
「いいえ、左様なものではございません」
「淫奔者に違いない」
「あ、何をなさるんでございます、あなたはほんとうに、わたしを殺して――」
女は身悶《みもだ》えして、か
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