、
「弁信さん、お前さんは、なんだってあんな馬鹿丁寧に辻番へ挨拶をするんです、第一、番人がいやしないじゃありませんか」
わざとこう言って試してみると、
「いいえ、そんなことはございません、二人おいでになりましたよ、一人の方は番所の中に、一人の方は、たしか棒を持って、私たちを咎《とが》めようとして、こっちへおいでなさるようだから、私は、その前にああいって、ちゃんと申しわけを致してしまいました」
弁信に図星《ずぼし》を指されて、
「まあ、なんてお前さんは勘がいいんでしょう」
お蝶は舌を巻いて、暗いところから弁信の面《おもて》を見直しました。それは、もしや、この按摩が偽盲《にせめくら》で、そっと目をあいているからではないかと思ったからです。しかし、盲目であることに正銘《しょうめい》偽りのないのは、その面《かお》つきでも、足どりでも、また杖のつきぶりでも、充分に信用ができるのであります。
こうして二人は、郡代屋敷のところまで来てしまいました。その時に、盲法師の弁信が、凝然《じっ》として郡代屋敷の塀際に突立ってしまいました。
「あ、あ、あ、あぶない」
杖を以て、前へ出ようとするお蝶を、
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