ば打ち返しもしない。じっと泡を吹いたなりで我慢しているところは、さすがに米友も、いくらか修行を積んだものと見なければなりません。
 それを、どう見て取ったのか、いい気になった金助はかさ[#「かさ」に傍点]にかかって、
「何だい、貴様の面《つら》はそりゃ。両国の見世物にだって、近ごろ貴様のような面は流行《はや》らねえや。ちょっと見れば餓鬼《がき》のようで、よく見れば親爺《おやじ》のようで、鼻から上は、まるきり猿で、鼻から下だけが、どうやら人間になってらあ、西遊記の悟空を、三日も行燈部屋へ漬けておくとそんな面《つら》になるだろう。よくまあ、昼日中《ひるひなか》、その面をさげて大江戸の真中が歩けたもんだ、口惜《くや》しいと思ったら、親許《おやもと》へ持ち込むんだね、親許へ持ち込んで、雑作《ぞうさく》をし直してもらって出直すんだ」
 この時分、あたりへようやく人だかりがしました。人だかりがしたから、金助は、いよいよ得意げに毒舌を弄《ろう》して、米友をはずかしめようとするらしい。
「野郎!」
 米友は歯をギリギリと噛み鳴らしました。けれども、まだ、自分からは打ってかからない米友は、何か思う仔細が
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