……」
と言いながら按摩《あんま》は、静かに歩いて竜之助の前を通り過ぎて行きます。
「今、両国に身投げがあったそうでございますね、でも助かったそうでございますよ」
按摩は自分の気を引き立てるために、わざとこんなことを言って、
「米沢町のお得意へ参りましてな、ついこんなに遅くなってしまいましてな、先方では泊って行けとおっしゃって下すったんですがね、ナーニ夜道は按摩の常だと言って、こうして出て参りましたよ、送って下さるというのを断わりましてな。自慢じゃあございませんが、これが勘《かん》のせいで……わたくしも新大橋を渡って本所へ参るんでございます、これからまだ一軒お寄り申すところがありますから、それへ寄って、本所の二ツ目まで帰るんでございます。按摩ではございますが二ツ目へ帰ります。当節は世の中が物騒でございますから、うっかり夜道はできませんけれど、そこは按摩でございますから……おや、危のうございますよ、ここに水溜りがございますから」
こう言って按摩が振返った時に、ヒヤリと冷たい風。音もなく下りて来た一刀。
「えッ、目の見えない者を斬ったな!」
かわいそうに、まだ年の若い按摩でありました
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