なく大得意で威張っている、癪にさわってたまらねえというようなことを言って聞かせて、気の短い米友の心に追々と波を立たせて行きました。
「ばかにしてやがら」
 米友がこういって憤慨した面《かお》つきがおかしいといって、道庵はいい気になってまた焚きつけました、
「全くばかにしてる、おれは貧乏人の味方で、早く言えば今の世の佐倉宗五郎だ、その佐倉宗五郎がこの通り手錠をはめられて、鰡公《ぼらこう》なんぞは大手を振って歩いていやがる、こうなっちゃこの世の中は闇だ」
 道庵先生の宗五郎気取りもかなりいい気なものであったけれども、とにかく、一応の理窟を聞いてみたり、また米友は尾上山《おべやま》の隠ケ岡で命を拾われて以来、少なくともこの人を大仁者の一人として推服しているのだから、いくら金持だといっても、国のためになる人だからといっても、ドシドシ人の住居《すまい》を買いつぶして妾宅を取拡げるなどということを聞くと、その傍若無人《ぼうじゃくぶじん》を憎まないわけにはゆかないのであります。
 その翌日、米友は道庵先生の家の屋根の上の櫓《やぐら》へ上って見ました。なるほど、話に聞いた通り、道庵の屋敷の後ろと左右と
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