大菩薩峠
道庵と鰡八の巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)贅沢《ぜいたく》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)又|如何《いかん》とも
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「にんべん+尚」、第3水準1−14−30]
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一
下谷の長者町の道庵先生がこの頃、何か気に入らないことがあってプンプン怒っています。
その気に入らないことを、よく尋ねてみるとなるほどと思われることもあります。それは道庵先生のすぐ隣の屋敷地面を買いつぶして、贅沢《ぜいたく》な普請《ふしん》をはじめたものがあるのであります。道庵先生ほどのものが、他人の普請を嫉《ねた》むということはありません。その普請が出来上るまでは、先生は更に頓着をしませんでしたけれども、いよいよ出来上って、その事情が知れた時に、先生が非常に憤慨してしまいました。その普請というのは、そのころ有名な鰡八大尽《ぼらはちだいじん》というものの妾宅なのであります。
鰡八大尽という
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