蛙のように飛びついて行くのですから、その原因と人柄はよくわからないながら、確かに面白い見物《みもの》であることに相違ありません。
この時分に、短刀を投げ捨ててしまっていたがんりき[#「がんりき」に傍点]は、それでも青地錦だけは口に啣《くわ》えて放すことではありませんでした。
小屋から小屋を飛んで歩いたがんりき[#「がんりき」に傍点]は、いつのまにか馬場の桟敷の屋根へ飛び移っていました。
「それ、野郎が桟敷の屋根へ飛んだ」
蛙のような裸虫《はだかむし》が、桟敷の屋根、桟敷の屋根と言いながら飛びついたけれども、これらの裸虫は、がんりき[#「がんりき」に傍点]のやったように手際よく、小屋掛けから桟敷の屋根まで飛びうつることができません。
彼等は一旦、小屋の尽きたところで飛び下りて、搦手《からめて》から、この桟敷の屋根へのぼり始めました。
「エッサ、エッサ」
桟敷の柱と屋根とは、みるみる裸虫で鈴なりになってしまいました。
桟敷の屋根の上をツーと走ったがんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵は、正面の馬見所《ばけんじょ》の方へと逃げて行きます。ここは太田筑前守と駒井能登守の両席のあった
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