》を拡げ、冷《ひや》でその酒を飲み廻し、煮しめを摘みながら、おもむろに桟敷から桟敷、見物から見物を見廻すのであります。
 ところが、はじめて気がついたように、赤い雛壇のところで眼を据えてしまいました。何か言おうとして咽喉《のど》をグビグビさせたけれど、幸いに、ちょうどその時に合図の花火が揚りました。
 このほかに、まだ一つ大目に見なければならないものがありました。それは名物の博徒《ばくと》――長脇差の群であって、こういう場合には、ほとんど大手を振って集まって来て、おのおのしかるべき格式によって、賭場《とば》を立てるのが慣例でありました。
 けれども、これは慣例に従って大目に見て、それぞれの親分なる者の権力を黙認しておきさえすれば、取締りにそんなに骨の折れることではありません。
 この連中は別に流鏑馬を見たいわけではなし、また見物を見に来るのでもなく盆の上の勝負を争いに来るのだから一見してこの社会の者ということが知れるのであります。
 ところがここに、なんとも見当のつかない二人の者がこの日、東山梨の方のどこかの山の中から出て、裏山伝いをドシドシ歩いて甲府の方へ出て行くのは、やはり流鏑馬を
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