りは水際立《みずぎわだ》った美男子でありました。それはまず大入場《おおいりば》の連中を唸《うな》らせたほかに、かの雛壇の連中をして、
「まあ、御支配様」
と言って恍惚《うっとり》とさせてしまったことほど、能登守の男ぶりが立優《たちまさ》って見えました。
 こうして能登守は、先任の太田筑前守がいる桟敷の前まで来て馬から下りて、筑前守とおたがいの会釈《えしゃく》があって席に着きました。
 能登守の後ろには小姓が附いていないで、若党の一学が跪《かしこ》まっていました。
 能登守が着座しても、まだ競馬の始まるまでには時間があります。その間は、見物が見物を見ることによって興味がつながれてゆきました。
 見物はそれぞれ勝手に上下の人の噂をし合います。
 けれどもその噂の中心が、どうしても能登守に落ちて行くのは争うことはできません。
「ああ、美《い》い男には生れたいものだなあ」
と思わず大きな声で歎息して笑われたものもありましたけれど、笑ったものもまた同じような思いで能登守の姿をながめていました。
 雛壇の連中は、さすがに口に出してそれを言うものはなかったけれども、その眼が一人として能登守の後ろ姿を
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