りました。我れ勝ちに前へ進んで、その蓆の下へ履物を押込んで、固唾《かたず》を呑んで見物します。
 市街からの道々へは露店が軒を並べてしまいます。
 少し風がある分のことで、天気は申し分がないから、朝のうちに広場は人で埋まってしまいました。
 やがて合図の花火が揚った時分に、桟敷が黒くなりはじめました。先任の支配太田筑前守は、小姓《こしょう》をつれてその席に着きましたけれど、相役の駒井能登守はまだそこへ姿を見せません。
 組頭や、奉行や、目附、同心、小人の士分の者も続々と桟敷へ詰めかけて来ました。その前から沙汰をして、近国の士分の者も同じくその桟敷に招かれたのが少なからず見えるようです。
 それよりも人の目を引いたのは、これら士分の者の奥方や女房たちが、侍女《こしもと》や女中をつれてこの桟敷に乗り込んだ時でありました。
 桟敷の上には、同じく鳩と菱《ひし》とを描いた幔幕《まんまく》が絞ってある。その下の雛壇のようなところへ、平常《ふだん》余り人中へ面《かお》を見せない奥方や女房や女中たちが、晴れの装《よそお》いをして坐っていることは、場内のすべての人気をその方へ集めました。
 そのうちに
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