、薬を飲ませておきました。
「友さん、いつお前江戸を立ってどうして甲府へ来たの。来るならば来るように、飛脚屋さんにでも頼んで沙汰をしておいてくれればいいに」
「冗談《じょうだん》言っちゃあ困る、飛脚屋に頼むにもなんにも、からきりお前の居どころが知れねえじゃねえか、それがためにずいぶん俺《おい》らは心配したぜ。ほら、ほかの軽業《かるわざ》の連中はみんな帰って来たろう、何かこっちで揉《も》め事があったとやらだが、でもみんな無事に帰って来て、両国でまた看板を上げてるのに、お前ばかりは帰って来ねえんだ。どうなったか、さっぱり様子がわからねえから、俺らはあの小屋まで聞きに行ったんだ。聞きに行くとお前、いつかの黒ん坊の失策《しくじり》があるだろう、それがために今でもあの親方が俺らをよく思っていねえんだ、それで追い払われちまったから腹が立ってたまらねえけれど、我慢してあの宿屋へ帰ってよ、それからこっちへ来る人があったから、その人のお伴《とも》をして連れて来てもらうまでの話はなかなか長いんだ」
「わたしだってお前、ずいぶん苦労をして死にかけたことが二度も三度もあったのよ。それでもムクがいてくれたり、また親切な人に助けられたりして、今ではお前、このお屋敷でずいぶん出世……をしているのよ。その間だって、友さんのことを心配していない日と言ってはありゃしない、どうかしてわたしの居所《いどころ》を知らせたいと思って、手紙を書いてもらって二度ばかり、両国のあの宿屋へ沙汰をしたけれども、さっぱりその返事がないから、わたしはどうしようかと思っていた」
「あれからの俺らというものは、あの宿屋にばかりいたんじゃあねえのだ。まあ追々ゆっくり話すよ、こうして会ってみりゃあ文句はねえのだが。そりゃあそうと気の毒なのはこの人だ、どこのどういう人だか知らねえが、口がまるきり利けねえのだ。ムクが案内するから俺らが天満宮の後ろの森の洞穴《ほらあな》の中から見つけ出して来たんだ、途中で冷たくなったから死ぬんじゃあねえかと心配して、俺らが急所へ活を入れてやって来たおかげで、どうやら持ち直した、この分なら生命《いのち》は取留めるだろう。口が利けるようになりさえすれば占めたものだが」
「明日になったらお医者さんを呼んで上げましょう、今夜のところは寒くないようにして上げておいて……友さん、もう遅いからお前さんもここへお寝なさ
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