した。お師匠様のお絹という人は、そのくらいのことをしかねない人。なるほど、神尾の殿様やその家来衆が迎えに来てくれてみれば、米友に附添を頼む必要はなくなってしまったかも知れないけれど、ここでもう用はないからと言って金包を出されたら、大抵の人は気を悪くするに違いないと思いました。
ましてやあの気の短い米友が怒り出して、この金包を叩きつけて逃げるということに、お松はかえって気の毒に堪えないのであります。
そこへ、お絹が見えたから、お松は米友が投げて行った金包を出して事情を話してみると、お絹は、
「それほど粗末になるお金なら返してもらいましょう、わたしに遣《つか》わせればいくらでも遣いみちがあるから」
と言って、恬《てん》としてその金包を再び自分の手に納めた上に、
「ほんとに、素直《すなお》に出て行ってくれてよかった。何かの力になるかと思って頼んでみたら、力になるどころか、かえって世話ばかり焼かせてしまって、この後、どんな間違いを起すか知れたものではない、今のうちに出て行ってくれたから助かったようなものさ」
お絹はこう言って、その金を懐中へ入れてまた、神尾主膳の居間の方へと出て行きました
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