かけながら、
「友さん、どうしたのです、そう無暗に逃げてしまっては事情《わけ》がわからないじゃありませんか、少し待って下さい、事情を話して下さい、わたしたちを置いてけぼりにして逃げてしまうのは酷《ひど》いじゃありませんか、少し待って下さいよ、ね、友さん」
お松がこう言って呼びかけた声の聞えないはずはありませんのに、米友はあとをも振返らず、いよいよ一生懸命で逃げて行きました。
「友さん、事情《わけ》がわかりさえすれば、お前の出て行くのを留めはしませんから、ちょっと待って話をして行って下さい、ね、友さん、何が気に入らないの、わたしはこんなに疲れてしまった、これほどにしてお前を追いかけて来たのに、お前が聞かないふりをして行ってしまえば、もし甲府へ着いた時に、君ちゃんの在所《ありか》がわかってもお前には知らせて上げないよ」
お松は駈けながら息を切って、こう言うと、この遠矢《とおや》が幾分か米友に利いたと見えて、米友は急に立ち止まり、
「お松さん、お松さん、俺《おい》らはこれからひとりで甲府へ行くんだ、俺らがどういうわけでひとりで甲府へ行くようになったのか、いま投げてやった包み物に聞いてみる
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