ない、いや、それは何とでも、若《も》し貴君の方から云い難《に》くければこちらから言葉を尽して掛合ってもよろしい、というようなわけで、到頭我輩も松岡君の意気に動かされて、では小生からも一つ福日へ申訳をして見ようということになった、そこで福日でも原田君が他の新聞なら兎に角最初の発祥地である都新聞からの希望では已《や》むを得ないというようなことで、福日も存外分ってくれて話が纏《まとま》って、それからまた社外にあって都新聞の為に書き出すことになった。
 それは今の何の巻のどの辺からであったか記憶しないが、相当に続けて行く、松岡君も自分の責任上福日と同一条件で無限に続けてもよろしい、という意気組であったのだが、扨《さ》て進んで行くうちに社中でまた問題が起ったらしい、原稿料が高いとか安いとかいうこともあったろうし、また、無限に続くというようなものを背負い込んでも仕方がないではないかというような苦情もあったろうし、また内容その他に就いても随分批難か中傷かも出て来たらしい、余輩は出社しないからその辺の空気には直接触れなかったが、かなり社中の荷厄介にはなっていたらしく、さりとて松岡君は面目としてどうも社
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