Oに、ブック・レヴューの文化上に於ける大きな意義を自覚しないということは、どうしても変なことだと考えられる。ブック・レヴューをもう少し重大視し、尊敬しなければならない、というのが私の気持である。処が偶々、東京の大新聞の若干が、しばらく前ブック・レヴューに或る程度の力点を置くようになった。スペースや回数を増した新聞もあれば、ブック・レヴューの嘱託メンバーを発表した新聞もある。その他一二、ブック・レヴューを主な仕事とする小新聞の企ても始まった。この原因については色々研究しなければならないが、一つは所謂際物出版物に対する反感から、本当に読める書物を、という気持が与って力があったろう。読書が一般に教養というものと結びつけられるような一時期が来たからでもあるだろう。尤もこの気運とは別に、最近の戦時的センセーショナリズムは、新聞紙の学芸欄を圧迫すると共に、ブック・レヴューへの尊敬は編集上著しく衰えたのではあるが。
「ブック・レヴュー」を意識的に尊重し始めたのは、一年半程前からの雑誌『唯物論研究』である。実は之は私たちの提案によるのだ。まず評論される本の数を、毎月(毎号)相当多数に維持することが、最
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