驕j。
 訳文が達者だといえば、河上徹太郎氏のシェストーフ『虚無よりの創造』(芝書店版)の訳は流石に名訳だ。同じくシェストーフ『悲劇の哲学』(河上徹太郎氏・阿部六郎氏・訳・芝書店版)の訳も名文だ。正確かどうかは知るところでないが、とに角翻訳であることを忘れて巻を措かずに読ませるものがある。前者は然し木寺・安土・福島・三氏の訳になる『無からの創造』(三笠書房版)と対比させて見ると興味がある。三氏の訳の方は収められた論文の数も遙かに多く、訳文も場合によっては地味に過ぎて生硬であったりするので、あまり読み良くはない。――だが実をいうと、私にはこういったニュヒテルンな性質の訳の方が所謂「名訳」よりも好ましいのである。なぜなら地味な訳は、概念上の連想が却って豊富なために、読むに骨は折れるが思想上の示唆に富んでいるからだ。尤も三笠書房のはもう一段手を入れるとズッと達意なものとなる余地があるとは思うが。
[#改段]


 3 世界文学と翻訳


 R・G・モールトンの『文学の近代的研究』(本多顕彰氏訳・岩波書店)を曾て私は読んで、第一に興味を惹かれたのは、文学と哲学との交渉に就いてであった。明治以来
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