題は勢い時事的批評に這入らざるを得ない。そこには本機関誌では取り扱い得ない範囲に横たわる問題が無限に匿されているばかりでなく、恐らく私の現在の力では決定し切れない要素も見出されはしないか、と考えられるからだ。
私は単に、氏が最近到達したらしく見える工業思想の理論について、理論的検討を試みるに止めなければならぬ。それとても理研コンツェルンが社会に於て実際に演じつつある事業の分析と批判との関係から見ない限り、実際的ではないのであるが、ここでも、前に述べたと同じ理由によって、そういう点は切り捨てなければならない。
処で大河内氏は、最近『農村の工業と副業』という小著を出版した。この小著については、私はすでに本誌〔『唯研』〕の「ブック・レヴュー」で思想内容の要点を簡単に批評したのである。つまり科学主義工業[#「科学主義工業」に傍点]なる観念の有っている困難と矛盾とを指摘したのである。科学主義工業という観念こそ大河内氏が最近到達した工業思想上の結論であり、云わば氏の独創的な――併し現に実地に理研コンツェルンを支配の下に実現しつつある処の――産業哲学なのである。尤も氏の独創的な産業哲学と云っても
前へ
次へ
全273ページ中158ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング