であるに反して、単行本の夫は実質に於て一年乃至二年を一期とする回転である処に基いて、単行本は雑誌に完全に圧倒される所以を説く。当然なことではあるが、有用な分析だ。評論雑誌の特大号が年四回なのも雑誌資本の年四回の回転率に基くという観察も、仲々警抜である。
 第四篇は言葉の問題を文学者の立場から実際的に分析したもので、第三篇と共に、文壇人に必要な参考材料であるだけではなく、文芸評論の新しい領域に先鞭をつけたものと見做してよい。「ローマ字問題雑感」はヘボン式に対する日本式ローマ字論の優越を証言したもので、一寸才気に充ちたものだ。平生文相の漢字廃止論の批評や、メートル法論議も、文化問題として正常に捉えられている。小学読本の文章法の検討も亦一読に値いする。現代文章に対する考察から始めて「将来の文章について」でこの本を終っている。
 著者はこの評論集によって、独特な地歩を占める文芸評論家であることを示したと云っていいようだ。その第一の特色は日本文学に対する国際的な考察だ。その第二は日本文壇に対するジャーナリズム機構・国際問題・からする理論的な分析だ。そして第三にこの底に見えかくれて流れている唯物論
前へ 次へ
全273ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング