から云わば出来上っているものだという風に、仮定する癖がある。社会機構に於ける物的構造上の秩序を第一義的な分析の規準とはしないで、いきなり社会の之あれの一般共通な徴候・現象をとり出して、之が何か社会の本質的な諸要素ででもあるように考える。風俗はこういう社会学的方法によれば一等通俗的に簡単につかみ易いように見えるだろう(その極端なものは「モデルノロジオ」の類だ)。之に反して史的唯物論の方法から行くと、風俗という現象は方法上一種の副次的操作を要する処の却って高度な複雑な現象なのだ。――だがそう云うことは決して、風俗を社会学的(現象主義的)に安易に取り上げる仕方が正しいということにもならず、まして史的唯物論の方法によって風俗という題材の解決がつきにくくなるだろうということをも意味しない。元来、現象なるものは直接なもので直覚的には簡単なものだ。だが、夫は分析の上からは最後になって出て来なければならない程複雑なものなのだ。
 処で実際問題として見ると、ブルジョア社会学に於ても(日本では空疎な方法論がまだ盛んなようなわけで)、風俗というものはあまり「科学的」なテーマにされていない、恐らく之はあまり理
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