ても現在の唯物論の弱みでなくてはならぬ。にも拘らず多少知能の進んだ社会分子の間には唯物論に期待を持っているものが少なくはないのだ。――だが何よりも尊重すべきものは現代唯物論(弁証法的唯物論)の理論そのものの有力さでなければならぬのである。唯物論の説明は簡単には尽せないが、少なくとも之はただの世界観ではなくて、同時に哲学の唯一の科学的方法[#「唯一の科学的方法」に傍点]を意味するものだということは、特に注目に値いする。そこを忘れなければ唯物論を物質偏重主義だとか精神を否定する主義だとか考えたがる滑稽な無知から、救われることが出来るだろう。哲学史の一頁も読んだことのあるものには、こういう無知は到底我慢なり兼ねるものだが、特に日本の政治家や卑俗な言論家達は哲学史に無知なことこの上ないのである。
三[#「三」はゴシック体]
処で、今まで説明してきた処によって、今日の観念論と唯物論との、一体どっちが思想の科学又は世界観の科学として科学的で学問的かということは、大体見当がついたことと思う。之を厳密に論証することはもっと手数の要ることだが、両方の特色を挙げて見ただけでも輪郭は判るだろう。
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