見て皆一緒に吹き出して了ったということは、だから仲々重大な外交問題を意味するかも知れない。一国の生産機構も、その国の農民(つまり百姓)や小市民などの風俗を描けば、おのずから芸術的に特徴づけられることになるのだ。――大きい文学で風俗を描かぬものは殆んどないとさえ云っていいのではないかと思う。
風俗を見ることは、だから元来感覚主義の範囲にぞくする。そしてこの風俗的感覚そのものが道徳的な意味、モラル、を持っているのである。映画がまず第一に見せるものはこの風俗的感覚であり、そこに映画の感覚的な、そして従って[#「従って」に傍点]又社会的[#「社会的」に傍点]な、面白さがあるのだと私は思う。現実的リアリティーに於ては、社会現象は風俗となって眼に見える[#「見える」に傍点]。
処で風俗とエロティシズムとは切っても切れない関係に立っている。グロテスクよりもエロティシズムの方が遙かに風俗に与える動揺は大きい。食事が風俗を挑発する程度もエロティシズムが風俗を挑発する程度に較れば問題ではない。エロティシズムは風俗壊乱のものと考えられている。――だがエロティシズムを単に煽情主義と考えるから、夫は風俗の破
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