[#「現象」に傍点]であって、その内部的な機構ではない。そこで社会現象[#「現象」に傍点]の批評は、時には風俗批評とも云われるのである。けれども風俗の裏には、常に思想があるのだ。
 私はまず初めに、思想と風俗とのこうした交流の経緯を、独自な題材として考察して見た。それが第一部「風俗」である。そしてこの考察に沿うて、特に、現下の日本に於ける教育関係の現象と、宗教関係の現象とを、考察して見た。第二部「教育風俗」と第三部「宗教風俗」とがそれである。他に、科学・文芸・政治外交・経済・其の他について風俗現象を取り扱った文章もあったのだが、之は割愛せざるを得なかった。
 この評論集は、一年足らず前に出版した評論集『思想としての文学』と、直接な関係がある。「思想としての風俗」とでも云いたい処だ。その姉妹篇と云っていい。
一九三六・一一[#2字下げ]
東京[#16字下げ]
戸坂潤[#地から1字上げ]
[#改頁]

 第一部 風俗

 1 風俗の考察
     ――実在の反映一般[#「反映一般」に傍点]に於ける風俗の役割

   一[#「一」はゴシック体]

 カーライルは『サーター・リザータス』に於て
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