の問題はこの自己教育の方向にあるのである。女性を教育するものはだから現代、何よりも社会の転化そのものであると云わねばならぬ。今日の女性教育にとって最も有効な手段の一つは、女性が封建的家庭から独立することだ。之が資本主義下に於ける女性教育の根本的矛盾を解決するに必要なコースである。だが本当に封建的家庭から女性が独立出来るということは、つまり現下の資本主義下に於ける家庭の崩壊と共に、之を合理的な結婚形式に高められる新しい性関係のなり立つ社会の建設の他にはないのである。モダンガールの類はここまで問題を押し進めていない。だから彼女達には単なる無能な不平とニヒリスティックな快楽以外に生活の開放がないのだ。――でそうなると問題は単なる女性[#「女性」に傍点]の問題でもなく、又単なる教育の問題でもない。この問題は大衆の階級的動き[#「階級的動き」に傍点]の他には実地の解決を見出だすことが出来ないということになる。女性教育に就いてすぐ様思い浮べられるのは男女共学の問題と広義の性教育の問題とである。だが日本の現状では(尤も日本には限らぬが)夫をこの大衆の階級的動きから割り出さぬ限り、男女共学も性教育も決して実を結ぶことは出来ぬ。婦人参政権問題も廃娼問題も皆そうだ。――教育の根柢は学校でも家庭でもなくて正に社会だ。そして女性教育の根柢は女性の問題や教育の問題にあるのではなくて、正に社会の階級的動きの問題にあるのである。
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17 現代青年子女の結婚難
結婚生活に這入ることが、社会生活として、とに角容易なものでないという意味なら、結婚難は昔からあったわけだ。極度に貧困な男や、色々の階級の売女達は、昔から結婚難であった。彼等は、少なくとも世間からレッキとした夫婦関係と見做される一夫一婦制度に則った性生活には、容易に近づくことが出来なかったのである。之は要するに貧困から来た。
だから結婚というこの制度は従来、社会に於て相当な位置を占めているような階級の人間だけにとって当り前至極な制度であり、大して苦しまなくても這入ることの出来た制度であったが、他の相当少なからぬ数の下層の男や女にとっては、羨しくても手のとどかない社会制度だったわけである。
而もそういう社会で通用する道徳は、一夫一婦制度が神聖犯すべからざる鉄則だと教えるのだから、結婚したくても出来ない男女、而も正式の結婚によらずに何かの様式で性欲や愛情を満足させねばならぬ男女は、社会の道徳によって極度に虐待される。侮辱されたり後ろ指を指されたり、権利を蹂躙されたりする。最近或る愚昧な一群の「名流婦人」達が、公娼制度の擁護を叫んで起って云うに、良家の子女の貞操を保護するためには公娼という官許の売淫制度が社会風教上必要だ、というのであるが、こういう馬鹿げた考えも案外従来の常識とひどく距ったものではないのである。
併し何と云っても、家族の財産に基く一夫一婦制に則った所謂「結婚」なるものは、従来の日本の社会に於ける男女関係の最も公的代表者であることは云うまでもないので、徳川時代の封建制の下では、この結婚なるものが大抵の武士や町人や百姓達にも実行出来るものであった。この点明治時代に這入っても大した変りはなかったようである。でそういう場合には、実際は社会の至る処に結婚難があったにも拘らず、結婚難という事実が、まだ問題にならずに済むことが出来た。社会の相当の階級では、大体に於て、結婚難は例外のような場合でなければ決して起きそうになかった。娘達は年頃になれば、何とか親達の手によって、どこかの男の妻として片づくことが出来た。普通の家庭の十人並みの娘なら、この点安心していられたのである。
結婚難ということがやかましくなり、重大な社会問題になって来たのは、大正の末期からであるように思う。その頃から事実結婚難が大きくなって来たのが根本の原因だが、その結果として、結婚難ということを世間の人間がハッキリ認めて口にすることが流行になって来たのである。
ではなぜ結婚難がこの頃から増大したか。結婚難の原因は色々と挙げられている。女学生教育が普及したために、勉強のおかげで婚期を失するのだという考えもあるらしいが、この説の辻褄の合わないのは勿論だ。皆んなの婚期が延びるのだから、それだけ年を取っても婚期を失うという筈はないのである。結婚適齢期は段々後れて来つつあるのである。娘達の眼が肥えて来て、要求が贅沢になったから、というのも聞えない。男はそれ程屑ばかりでもあるまい。又職業婦人になる者が多くて、その職業婦人という独立な生活の自由を失うのが嫌だというので結婚拒絶症になっているのだ、という説明も見かけるが、それは大体から云うと嘘で、職業婦人は年齢の関係もあって、最も結婚を熱望している女群なのだ。ただ事実、なぜか結婚が出
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