神兵隊」事件は少くともその発生当時は、気の毒な程、社会の注目を惹かなかったものである。皇国農民同盟の前田某や大日本生産党の鈴木某が四十一|口《ふり》の日本刀を用いて、銃砲火薬店を襲撃し、拳銃や[#「拳銃や」は底本では「挙銃や」]実弾を手に入れた上で、いつもねらわれる牧野内府邸や首相官邸、政党本部、警視庁、財閥巨頭邸等々を襲撃して、恐怖時代を出現させるという計画の下に、大日本神兵隊という××不可思議な軍隊を組織して、国防大祈願という運動をやろうとした、という事件であるが、之だけだと、如何にも重大な驚異すべき大事件であるように聞える。処がどういうものかこの事件には、どことなく隙があり、シックリしない処があって、この事件が社会からあまり注目されない原因もそこにあったらしく見えるのである。
 第一、日本刀で銃砲火薬店をおどかしてからでなければ、本当の武器らしい武器が提供出来ないというような段取りは、血盟団事件や五・一五事件の夫に較べて、何かに類するものをこの事件に感じさせるのであまり権威ある事件だとは受け取れなかったのである。だから之は警視庁などが腕を振うには持って来いの手頃の材料で、数日にし
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