足りないわけだ。今度から監置主義の代りに治療主義になったとしたら、従来の精神「病院」という名前の代りに、何という名を付けたら好いかが恐らく大問題になるだろう。
精神病院は監置主義を捨てて治療主義になるそうだ。処が癩病院も亦、この頃監置主義・隔離主義を捨てる方針らしい。大阪にある外島保養院(之は二府十県の連合経営のものだから之亦最も代表的な癩病院だ)で、院長と患者とそれに関係の警部某とが共謀して、二十名程の患者を院外へ追放した、という奇怪な事件が発生した。検べて見るとこの二十名程のものは赤いレプラ患者だったというので、当局は色々な意味で狼狽しているのだが、なぜ又責任ある院長が衛生上こんなに無茶な処置を大胆にも取る気になったかは、一寸奇怪に思われてなるまい。
併し事「赤」に関する限り、衛生学も医学も科学も消し飛んで了うのが現代の風俗なのだから、大して驚くには当らないのである。院長は多分、一パシ世間並の立派な処置を取った積りだったのだろう。傷ましいのはいずれにしても患者達である。
精神病では治療主義の採用へ、癩病でさえ監置主義の抛擲へ、向って来るようだが、マルクス主義もどうやら一種の病
前へ
次へ
全402ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング