博士はこの命令に従って、比島側に対して体協の抗議文に対する返事を促して、帰国の途に就いた。
 処が日本の体協は突然今度は「大国の襟度」を示して、第十回極東大会参加に決し、その旨フィリッピンに通告し、満州国体協には慰撫の文書を手交して、声明書を発することにした。そこで憤激したのは満州側であって、約束によれば最悪の場合には又相談しようという筈だったのに、相談もしないで勝手に一方的に参加を声明するのは怪しからんと云い出す。日本側は、あの約束は非公式だったのだから背信ではないとつっぱる。満州国体協東京委員会の藤森代表(この日本人は満州国側の代表者だと見える)は、現幹部の下に立つ限りの大日本体育協会とは、一切の関係を断つ旨を声明し、大いに山本博士に[#「山本博士に」は底本では「山本博土に」]同情を表してさえいる。どうやら山本博士は[#「山本博士は」は底本では「山本博土は」]満州側らしい。之に対して今度は体協側から満州側の誤解を指摘する番になって来て、例によって、私的意見を公的意見と思い誤ったのが満州側の誤解なのだと体協側は主張している。
 で結局日本体協は大会参加に決定して了ったわけで、もう問題
前へ 次へ
全402ページ中186ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング