は、今年の大学専門学校卒業生達を数えなければならぬ。何しろ大口二百名の満州国官吏を採用するというので、文部省へだったか又は直接に各大学専門学校へだったか、(そこの区別は一寸ゴタゴタがあったようだが)、人物・身体・学業三拍子揃った粒よりの「有為な」青年の推薦方を依頼して来たのである。官公立と私立とから平等に採用して欲しいというような、先の先まで考えた就職者側の注文もあった。私は当時、帝大卒業生などは人物・身体・の二条件に於ては遠く拓植大学卒業生などに及ばないから、まず官立一私立二ぐらいの割合が公平だろうと思っていたのだが。
 さて有為な青年は仲々多いものと見えて、学校当局の折紙づきの卒業生が二千名も受験したそうである。受験場は東京・京都・仙台・福岡・京城の五カ処だから、まずオール日本青年代表の選定という慨がないでもない。――処が有為な青年は実の処、又案外少ないものらしく、わずかに十七名(いずれも帝大出身)だけが選定されたに過ぎなかったのである。あまり出鱈目だというのでわざわざ満州国にまで押し渡って先方の当局にねじ込んだり、内地の当局に抗議を申し込んだりした青年もいたそうである。併し何と云
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