ア的人身売買をしてはいけないという禁止令はまだ出ていないようである。併しそんなことまで構っていると問題は限りがなくなるのである。今に男の大人の虐待までも問題にしなければならなくなるだろう。労働者や農民の失業者の日常的な社会的虐待、又之に学生やインテリを加えての警察的虐待など、こうしたものに対して一々禁止命令を制定していては切りがなくなるわけである。禁止令はなるべく狭い範囲にだけ実行されて纒りがつくような種類のものから、先に選ぶべきだろう。そうしないと労多くして効少ないからである。児童虐待防止法などは、それには持って来いの、小ジンマリした理想的な法律ではないか。
[#地から1字上げ](一九三三・一〇)
[#改段]


 林檎が起した波紋

   一、林檎の場合

 多分読者は東京に六大学リーグ戦というものがあるのを知っているだろう。五つの私立大学に東京帝大が加わって出来ているが、帝大には応援団もなければ大したファンもいないそうで、そのせいかどうかこの頃帝大の成績は問題にならない程悪いそうである。で帝大は云わばおつき合いに出ているようなものだから、本当をいうと五大学リーグ戦と云ってもいい位いだそうである。日大・専修大其他から出来ている所謂五大学リーグ戦と違う点は、日大などを決して入れてやろうとしないという処にあるので、即ち決して七大学リーグ戦などにならないということがその本質の一つだ。処が実はそれが六大学リーグ戦ではなくて五大学リーグ戦に外ならないのである。
 併し、この頃時々優勝するという立教や法政が、仮にリーグを脱退してもリーグにとっては大して問題ではないだろうが、之に反して、もし仮に早稲田か慶応かが脱退するとなったら、リーグ戦の価値はまず殆んど零になるだろう。云わば六大学リーグ戦は、早慶戦を合理化するために出来上ったようなもので、又早慶戦を中心に行われているようなものだ。こうなると六大学リーグ戦、実は早慶二大学リーグ戦だということになる。
 早慶を除いた外のリーグ加盟大学は早慶のおつき合いに引き出される刺身のツマのようなものだが、それで早慶外のリーグ加盟大学が損をしているかというに決してそうではないらしい。帝大は学問の上では兎に角(無論学生の学問のことで教授の学問になると仲々問題が多いが)、カレッヂボーイシップ(?)の上では問題にならないが、それでも野球部はたしか
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