宣揚にも文化交換にもなりそうもないではないか。一体、一定の対手だけを選んで文化宣揚をやろうというのが無理な注文であると同じに、一方的[#「一方的」に傍点]にだけ文化の宣揚をしようということが、虫のいい勘定なのである。
処で文部省は大学、専門学校の教授の海外留学を停止する方針だそうである。之も今云った外務省の虫のいい方針と何かの関係があるかも知れない。強硬外交ということであるが、之は教育・文化政策上の強硬外交であるかも知れない。海外留学の代りに、この頃は専門学校以下の教師になると、内地留学というのが相当盛んに行われている。なる程、本当に自由な条件の良い時間を得たいと思っている研究家にとっては、内地留学は海外留学よりもズット有難いことに違いない。もし「国民精神文化研究所」などへ留学を命じられるのでさえなかったならば。
とにかく外務省と文部省とが之程仕事の上で接近したことは慶賀すべき現象で、何も文部省は、内務省や陸軍省ばかりの同伴者である義務はない筈である。
三、児童虐待防止法
この十月一日から児童虐待防止法が実施され、十四歳未満の児童を、家庭内に於ける虐待・種々なる職業に於ける虐使其他から護ることになった。之を喜ばない人間は本当は一人もいない筈である。今年の六月初めには、公娼の自由外出が許可されたが、薄倖児の救済はそれにも増して吾々自身に希望を与えるものがある。尤もその反作用として、わが国は、まるで原始社会のように、女や子供を虐待する国柄であったような気もしないではないのだが。
前日の九月三十日には、東京府社会事業協会は市内五十の各社会事業団体を総動員し、全市を十五地区に分けて、早朝から係官を出張せしめ、主旨の宣伝に力めたものである。「可愛そうな虐待児童がいたらすぐに警察に知らせて下さい」とか「十四歳以下の子供に物売りをさせてはいけません」などというビラを配りながら、薄倖な児童の家庭を訪問させたのである。
処で新聞の社会面が報じる※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]話によると、社会事業協会の幹部の一行が吾妻橋傍に佇んでいる親子ずれの門付けをつかまえて、明日から止めないと懲役になるよと注意すると、母親は急にメソメソと泣き出して了ったそうである。「この子に稼いでもらわなければ御飯が食べて行けないのです、亭主には棄てられ
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