て忽ち神兵隊の「全貌」が暴露されたらしく思われた。
 血盟団事件や五・一五事件が、右翼の正統派による運動だったとすれば、神兵隊事件はこのオーソドックスから離れた運動で、そこから武器の供給方法が稚拙であったり、運動全体に権威がなかったりする弱点が生じているわけで、そういう意味から云って決して××するに足る事件ではない、ということがこの時まですでに明らかになったのである。
 問題は之で消えて行くのかと思っていると併し、意外の方面からこの問題が新しく展開し始めたというのは、松屋の重役、内藤某に関わる有価証券偽造、詐欺の嫌疑から、同重役と神兵隊との間に意外な関係が伏在していることが発見されることとなった為である。尤も問題は幸いにして、この某重役の私的犯罪へ関係して行くだけなのであって、別に、軍部とか其他色々の方面へ関係して行くのではなかったから、意外は意外であっても、決して心配すべき筋合いのものではない。だから警視庁は大手を振ってこの問題の「核心」に肉迫出来るというものである。その結果今日迄に明らかになった処によると、予備役歩兵中佐安田某という問題の人物が登場して来て、その人物の自白によって、例の重役内藤某から神兵隊に運動資金として四万円の金が融通されていることが判り、而もそれが神兵隊事件の計画を株の思惑材料として重役に提供した報酬に外ならないということが判って来た。安田中佐自身が去る七月四日迄に数回に亘って事件を例の重役に売り込んでいるのであり(尤もその仲介者がその金額の一部分を着服したかしないかという問題があるらしいが)、一方に於て重役側では神兵隊事件をたのみにして借金の言い訳けをしたり、株を大量的に売りたたいたりするかと思うと、他方に於て神兵隊側では、重役からの資金をあてにして挙兵の日を延期したり、再延期に就いて幹部同志の間に対立を産んだりしている。事件は未然に防止されたから、重役は折角あてにした暴利を棒に振って了ったわけだが、ファッショ運動と株の思惑とが結合している点には誠に興味津々たるものがある。
 世間ではこの事件を××××だと云っている。併しこの事件だけが大して特に××××なのではない。何によらず事件を起こすには資金が要ることは判り切ったことで、一見柄の良くない株の思惑売買を利用したからと云って、それだけでこの計画が、金銭上の利欲や売名のためだったとは断定出来
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