共に、痛い足を引きずりながら東京地方検事局に平田次席検事を訪ねて、取りあえず口頭を以て、藤沼警視総監・丸之内署警部井上徳三郎・同署特高係高林定太郎氏等を、傷害罪と涜職罪で告訴告発したというのだが、殴られもしないのに傷害罪や涜職罪で告訴するというのは全くおかしい。いずれこの点に就いては丸之内署かどこかから、適当な弁明があることと思う。
数日後公娼廃止反対の陳情で、女郎屋の亭主達三百名が内務省と警視庁に押しかけたが、これは別に負傷者を出さなかったらしい。併しとに角、事毎に警察官と大衆との間へ疎隔を来し勝ちなのは遺憾至極と云わねばなるまい。何とか両者を、丁度労資協調や労働争議強制調停の精神のように、理想的に協調させる途はないものかとかねがね考えていた処、今では大分前になるが東京警察後援会というものが出来上ったのである。確か原嘉道氏が発企人の筆頭で、私などにも加盟を求められた事があったかと記憶するのであるが、その時私はなぜ賛同の意を表しておかなかったか一寸理由が判らないが、処がこの折角の警察後援会自身がまた、警察を相手にして問題を起して了ったのだから、始末が悪い。
後援会は警察を後援する心算で、優秀な警官並びに警官類似の行為のあった少数の市民に対して、感謝状と金一封とを贈るの会を、二十五日警視庁内で挙行した。之は前に内務大臣賞を優秀警官に与えたことの真似だそうで、警察を後援しようというのは、それが後援である以上大衆でなければならないが、その大衆が内務大臣の真似をすることは少し出過ぎた行為だったかも知れないが、それはとに角として、その席上、後援会の理事である矢野恒太氏が、ウッカリ一種の感違いをして脱線挨拶をして了ったのである。
矢野氏は云ったそうだ、「諸君に贈呈する賞与は決して泥棒や殺人犯人の製造を奨励する意味はない、最近若手司法官が遣り過ぎるとの世評があり、警視庁も些細な事件をほじくり過ぎる傾向があるようである、今後は何でも彼でも巡回中に犯人を捕えねばならぬという意識を捨て、剣の音をさせながら歩いて、警官がよく廻ってくるから悪いことをすれば危険だということを感じさせて、漸次自発的に罪を犯さぬようにさせる位にして欲しい」(東朝七月二十八日付)云々。――実際にはどんな風に言ったのだが判らない処もあるが、とに角以上のような言葉が甚だしく警視庁の主脳部を憤慨させたらしい。警視
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