再び科学的精神について
(「最近日本の科学論」続編)――教学に対して――
戸坂潤
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)科学の素人[#「素人」に傍点]に対する
−−
私はまえに「科学的精神とは何か」という文章を書いた。之は決して科学的精神全般について述べたものではなかったが、又決してその瑣末な一部分について述べたものでもなかった。そこに論じた事柄こそ、今日に於ける科学的精神の核心に触れる時局的要点であると信じたのである。そして文学主義と文献学主義との批判が之であった。
問題は主に社会科学乃至文化理論に連関する。自然科学に就いてはあまり触れなかった。だがこのことは、或る人達が考えるように、決して片手落ちでもなければ、又具体的でなかったのでもない。なぜ片手落ちでないかと云えば、今日科学的精神が話題として社会的に重大意義のあるのは、必ずしも自然科学的思考の世界に於てでもなく、まして自然科学者の専門世界に於てでもないからだ。そういう個処に於て科学的精神が問題になり得るのも、実はそれが社会科学・哲学・乃至文化理論と直接に連
次へ
全25ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング