ネらない。即ち知的直観(I)に於て感性的直観(S)と思惟(D)とが結び付くのである、と同時にSとDとの結合の結果がIに外ならないのである。[#ここから横組み]S+D=I[#ここで横組み終わり]でなければならない。併し茲に注意しなければならないことはS+DがIに基くと云ってもSそのものがIに基くということにはならない(同様にDそのものがIに基くということにもならない)。唯だ+D[#「+D」は縦中横]がIに基くのである。それ故SとIとの関係はSがIに基くのではなくしてIがSに基くのでなければならぬ。この意味に於てSはIに対して根源的であると云うことが出来る。[#ここから横組み]S+D=I[#ここで横組み終わり]ではあるが[#ここから横組み]I−D=S[#ここで横組み終わり]と記すことは出来ない。これが知的直観と感性的直観との間の一般的な関係である。処が前に述べた処によって空間直観は一種の感性的直観(Sr[#「r」は下付き小文字][#「Sr[#「r」は下付き小文字]」は縦中横])であり幾何学的直観は一種の知的直観(Ig[#「g」は下付き小文字][#「Ig[#「g」は下付き小文字]」は縦中横])である。従って次の二つの関係を得る。[#式(fig43263_06.png)入る]及び[#式(fig43263_07.png)入る]。この場合+D[#「+D」は縦中横]は単に思惟の結合を形式的に云い表わしているのでそれが実際上如何いう具体的内容を取るかはまだ決められてない。又吾々はIr[#「r」は下付き小文字][#「Ir[#「r」は下付き小文字]」は縦中横]及びSg[#「g」は下付き小文字][#「Sg[#「g」は下付き小文字]」は縦中横]なるものの存在に就いては何も与えられてない。であるからもしr≡gでないならば二つの関係から吾々はSr[#「r」は下付き小文字][#「Sr[#「r」は下付き小文字]」は縦中横]とIg[#「g」は下付き小文字][#「Ig[#「g」は下付き小文字]」は縦中横]との間の一定した関係を何も導き出すことは出来ない。之に反してもしr≡gであるとすれば両式から[#式(fig43263_08.png)入る]という結果を得る。即ちr≡gならば幾何学的直観は空間直観に基くこととなる。それ故幾何学的直観と空間直観との関係を知る――それが私の課題である――ためにはr≡gであることを見出せば好いわけである。之を云い直せば幾何学的直観に於て感性的な基礎となるものが空間直観と同一であることを知ればよい。そして之を知るために最も手近かに見えるものは幾何学と空間直観とに共通な内容を発見しようとする試みであろう。例えば連続は両者に共通であり、空間の直線性(平面性、ユークリッド性)は又射影幾何学の線(即ち直線)や面(即ち平面)の概念に見出される。空間の直観が無限であるように例えば射影幾何学の対象は無限であり又無限遠点というような概念もこれに基く。であるから之は確かに一つの方法であるに違いない。併し如何に多数の例を挙げてr≡gであることを例証するにしても凡てを枚挙しない限りその推論は帰納的蓋然性以上の妥当を得ることは出来ない。仮に何処か一つ共通でないものが発見されたならばもはやr≡gの証明としては役立たなくなる。それ故r≡gを証明することは一見容易に見えて実は不可能であると云わなければならぬ。であるから私は他の方法を用いる必要がある。今始めから記号的に[#「記号的に」に傍点]r≡gと仮定しよう。という意味は記号的に[#「記号的に」に傍点][#式(fig43263_09.png)入る]であることを仮定しよう。この場合Sr[#「r」は下付き小文字][#「Sr[#「r」は下付き小文字]」は縦中横]とIg[#「g」は下付き小文字][#「Ig[#「g」は下付き小文字]」は縦中横]とは既知の項であるが、D′[#「D′」は縦中横]は未知項である。云い換えればこの形式的な記号関係はまだ必ずしも「幾何学的直観が空間直観に基く」という命題とは同一でない。併し若しD′[#「D′」は縦中横]=Dであることが見出されたならば、即ち+D′[#「+D′」は縦中横]とは思惟が空間直観に結び付くことであるということが何処からか見出されたならば、「幾何学的直観は空間直観に基く」こととなる。即ち吾々は[#式(fig43263_09.png)入る]の式のD′[#「D′」は縦中横]に相当するような思惟内容を何処からか探し出して来れば好いわけである。而もこの方法に於ては前の方法とは異りこのような思惟内容はただ一つ見出されれば充分なのである。
 この方法を実際的に用いるに当って次の二三の考察をしておく必要がある。向に私は経験的直観と純粋直観とを区別し、空間直観は純粋直観に属することを述べた。今もし
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