、デカルトの自我問題を以て、近世哲学は始まると考えられている。私は必ずしもこれに同意することが出来ない。近世哲学はF・ベーコンの「唯物論」を以て始まると見るべき世界史的理由があると思うからだ。しかし唯物論の最も重大な批判的要点である「フィロロギー主義反対」(これはすでに唯名論[#「唯名論」に傍点]の形から始まる)をば最も自覚的に意識的に企てた人としては、そしてこれを『ディスクール』という実例を以て実演さえして見せた人としては、デカルトを第一位に推さねばならぬ。デカルトのこの歴史的意義は、単に近世的や近代的であるというだけではない、これこそ正に現代的[#「現代的」に傍点]な意義だというべきだろう。
底本:「日本の名随筆 別巻92 哲学」作品社
1998(平成10)年10月25日第1刷発行
底本の親本:「戸坂潤全集 第五巻」勁草書房
1967(昭和42)年2月
入力:加藤恭子
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年5月3日作成
青空文庫作成ファイル:
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