正に一つの物自体[#「物自体」に傍点]――之こそ言葉通りの事物の本質ではないか――概念に帰着する処に特色をもつ。Aなる物それ自身――物の本質――は苟くもそれ自身であって現象[#「現象」に傍点]でない限り、αとしてもβとしても現われることを許されない筈ではないか。処で性格概念は恰もこの点に於て本質概念と根本的に異っている。性格――それは与えられた刻印であった――は常に、人々にとって[#「人々にとって」に傍点]、αとして或いは又βとして現われ得るのでなければならない。性格は之を与える人々への関係を、その結局のテロスに於ても脱却しない処に、特色を有つ。刻印は常に与え[#「与え」に傍点]られるべきものであろう。本質概念の目的は――理念は――人々への関係を切り離す処に、之に反して性格概念の目的は之を最後まで持ち続ける処に、夫々の面目を現わしている。性格は人々への関係[#「人々への関係」に傍点]を含むことによってのみ成立する概念である。刻印――それは与え[#「与え」に傍点]られる――の概念が恰も之を注意せしめるであろう。
性格はそれみずからに人々への関係を含んでいる。それは人々と事物とを媒介する
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