の真中《まんなか》に五六人立って何かガヤ/\云いながら地《ち》を見て居る。雷が落ちたあとであろう、煙の様なものがまだ地から立って居る。戸口に立ったかみさんが、向うのかみさんを呼びかけ、
「洗濯物取りに出《で》りゃあの雷だね、わたしゃ薪小屋《まきごや》に逃げ込んだきり、出よう/\と思ったけンど、如何しても出られなかったゞよ」
と云って居る。
雷雨が過ぎて、最早|大丈夫《だいじょうぶ》と思うと、彼は急に劇しい疲労を覚えた。濡《ぬ》れた洋服の冷たさと重たさが身にこたえる。足が痛む。腹はすく。彼は重たい/\足を曳きずって、一足ずつ歩いた。滝坂近くなる頃は、永い/\夏の日もとっぶり暮れて了うた。雨は止んだが、東北の空ではまだ時々ぱッ/\と稲妻が火花を散らして居る。
家へ六七丁の辺《へん》まで辿《たど》り着くと、白いものが立って居る。それは妻《つま》であった。家をあけ、犬を連れて、迎に出て居るのであった。あまり晩《おそ》いので屹度先刻の雷におうたれなすったと思いました、と云う。
*
翌々日の新聞は、彼が其日行った玉川《たまがわ》の少し下流で、雷が小舟に落ち、舳《へさ
前へ
次へ
全684ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 健次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング