伝《てつだい》に行かねばならなかったのであった。
爺さんは泣声《なきごえ》して、
「岩もね、二週間すると来ますだよ」と云う。「兵隊に出すのが嫌だなンか云うことァ出来ねえだ。何でも大きくなる時節で、天子様《てんしさま》も国《くに》を広くなさるだから」と云う。
誰が教えたのかしら。
[#地から3字上げ](同 十二月一日)
[#改ページ]
生死
霜無く、風無く、雲無く、静かな寂《しず》かな小春の日。
昨夜、台所の竈台《へっついだい》の下の空籠《からかご》の中で、犬のピンがうめいたり叫《さけ》んだりして居たが、到頭四疋子を生んだ。茶色《ちゃいろ》が二疋、黒《くろ》が二疋、あの小さな母胎《ぼたい》からよく四疋も生れたものだ。つい今しがた母胎を出たばかりなのに、小猫《こねこ》の様な啼声《なきごえ》を出して、勢《いきおい》猛《もう》に母の乳にむしゃぶりつく。
子犬の生れた騒ぎに、猫のミイやが居ないことを午過《ひるす》ぎまで気付《きづ》かなかった。「おや、ミイは?」と細君《さいくん》が不安な顔をして見廻《みま》わした時は、午後の一時近かった。総《そう》がかりで家中探がす。居ない。屋敷中探がす。居ない。舌《した》が痛くなる程呼んでも、答が無い。民やをやって、近所を遍《あま》ねく探がさしたが、何処にも居ず、誰も知らぬ、と云う。まだ遠出《とおで》をする猫ではなし、何時《いつ》居なくなったろうと評議する。細君が暫らく考えて「朝は居ましたよ、葱《ねぎ》とりに往く時私に跟《つ》いて畑なぞ歩いて居ました」と云う。如何《どう》なったのだろう? 烏山の天狗犬《てんぐいぬ》に噛《か》まれたのかも知れぬ。三毛《みけ》は美しい小猫だったから、或は人に抱《だ》いて往かれたかも知れぬ。可愛い、剽軽《ひょうきん》な、怜悧《りこう》な小猫だったに、行方不明とは残念な事をして了うた。ひょっとしたら、仲好《なかよ》くして居たピンに子犬が生れたから、ミイが嫉妬して身を隠したのではあるまいか、などあられもない事まで思う。
夕食の席で、民やが斯様《こん》な話をした。今日《きょう》午後猫を捜《さが》して居ると、八幡下で鴫田《しぎた》の婆さんと辰さん家《とこ》の婆さんと話して居た。先刻|田圃《たんぼ》向うの雑木山の中で、印半纏《しるしばんてん》を着た廿歳許の男と、小ざっぱりした服装《なり》をした二十《
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