、色がすこし悪くつて」
さう云つてから「お部屋にお活けなさるのでしたら、もつといいのを、越水の原か、牧場まで行く道には、もうたんと咲いて居りますわ」とつけ加へた。
「これだつて、すこしも悪くはない」私はさう云つて、その一枝を手にした。とがくしの空色が散つたやうな、深い秋の匂ひがした。
「いい花ですね」私はもう一度云つた。一つの夢を見、もう一つの夢を見た。しかし、これは夢ではない、私はさう思ひながら竜胆の花をしばらく手離しかねてゐた。
底本:「花の名随筆9 九月の花」作品社
1999(平成11)年8月10日初版発行
※底本は表題に「かざし」とルビを付しています。
入力:浅葱
校正:noriko saito
2005年5月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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