野菜物を盗んで来て慰労宴を催したものだが、所謂『男踊り』の鰌掬ひは写実の儘で如何にも野趣に満ちてゐる」
 と、述べてゐる。
 かうしてみると、安来節と泥鰌掬ひとは中海といふ半淡半鹹の入海の水と、その水に近い田野と、安来といふ港とが自然とより集つてできたといふことがたやすく想像される。特に、水の上をわたつて聞えるときに、荒海でない内海のゆつたりした艪の音と、あまり明晰でない、しかし穏かな円味のある出雲訛りをもつてうたはれるときに、安来節の美しさと豊かさとはもつともよく現れるやうである。



底本:「日本随筆紀行第一四巻 山影につどふ神々」作品社
   1989(平成元)年3月31日第1刷発行
底本の親本:「田畑修一郎全集 第二巻」冬夏書房
   1980(昭和55)年8月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:浦山敦子
校正:noriko saito
2007年8月10日作成
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