小柄な様子には、何でも似合ふやうなところがあつたので、この紙衣裳さへ似合ふにちがひなかつた。小谷は何とかして、この場で房一に着させよう、その効果を楽しまうと考へてゐるらしかつたが、房一が相手にならないので、話を他に持つてゆき、いきなりこんなことを云ひ出した。
「誰でも主人が出なくてはいけないきめ[#「きめ」に傍点]でせう。すると、千光寺さんはどういふことになりますかね。坊主が神主の恰好をするのもをかしなもんぢやありませんかね!」
三
その日、河原町では早朝から何かしらざわめいてゐた。町の裏手に迫つてゐる山々はちやうど東側にあたつてゐたので、朝の日は河原町の上に光を投げて家々の白壁を明く浮き上らせる前に、町の西方にひろがつた盆地の端に低く長く横はつてゐる小高い丘陵地(それは最近切り倒された雑木山であるが、町からはかなり遠いので、何だかそこだけが茶褐色の埃を浴びてゐるやうに見えた)に最初の薔薇色の光を投げかけた。空にはきれぎれの雲が浮かんでゐた。それはどこを向いて流れてゐるとも判らないほどゆつくり動き、動くにつれてだんだん形を変へ、うすれ、又新しい雲がどこからか生れてゐたが、それもゆるゆると消えて行くのであつた。
かうして、びつくりするほど冴えた、明い日がやつて来た。いや、それは昨日も一昨日もその前も、かういふ日がつゞいてゐた。だのに、やはり、今日又新しく特別にとび切りにやつて来たとその度に思はせるほどの快い日だつた。どこもかしこも透き通るやうで、はつきりし、乾いた空気がふはりと頬のあたりに触れ、どこからかつんとする気持のいゝ山の匂がやつて来た。
その中を、子供達はまだ朝飯がすまないうちから通りへ出て、軒から軒へ筋交《すじか》ひに張りわたされた小旗の下を駆けまはり、叫び声を上げ、蝋燭に火の入らない日の丸提灯が伸び切らないで尻を持ち上げたまゝぶら下つてゐるのを眺め、家ごとに定紋入りの大提灯が板屋根のついた台と共に立てられ、鳳鳳のついた万歳旛《ばんざいばた》とがずらりと列をなして並んだ様を片目をつぶつてどこまでつゞいてゐるかすかし見たり、一々数をかぞへてゐたりしてゐた。そして、犬までが子供達のさわぎに釣られて走り、きよときよとし、又走り出してゐた。
午近くなつて空気は温められてどんどん上昇し、どこも冴えてきらめき、何か軽い気を遠くさせるやうな気配は、あ
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