謔、に固めていたことも――だが、彼が、外見を急造して、あのオテル・ボオ・リヴァジュへ乗り込んで来ていた巴里の理髪師ではなかったと、誰が保証し得る?
 そして、あのナタリイ・ケニンガムは、一年中のお給金を溜めてそれで着物を買って来た、名家の令嬢こと実は、倫敦《ロンドン》の一マニキュア・ガアルではなかったか――と、こういう、これは僕の想像である。
 が、物語りの結末から言って、ここはこの二人に、どうしてもそうあってもらわなければうそ[#「うそ」に傍点]だと僕は思うんだが、君、君の考えはどうです?
 私たちも、間もなく白い謝肉祭《カーニヴァル》を逃れて、安堵と一しょに英吉利《イギリス》海峡を渡った。
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Was it a dream ?
Say, was it a dream ?
[#ここで字下げ終わり]
 倫敦《ロンドン》には、アウモンズの花が平凡に咲いて、WEEK・ENDの自動車の流れが途切れもなく続いている。
 MR・ウインストン・チャアチルは、お茶の税を撤廃して、その減収を、競馬賭金仲人《ブック・メエカアス》の電話へ年四十|磅《ポンド》の増税を課することによって、
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