踊る地平線
長靴の春
谷譲次
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)香橙色《オレンジ》の
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)その窓|硝子《ガラス》には
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「火+房」、203−1]《だんぼう》と
−−
1
反照電熱機のような、香橙色《オレンジ》の真《ま》ん円《まる》な夕陽を、地中海が受け取って飲み込んだ。同時に、いろいろの鳥が一せいに鳴き出して、白楊《はくよう》の林が急に寒くなった。私は、それらの現象を、すこしも自分に関係のないものとして、待合室の窓から眺めていた。その窓|硝子《ガラス》には、若い春の外気が、繊細な花模様を咲かせていた。
そこは、ふらんすと伊太利《イタリー》の国境駅のヴァンテミイユだった。
小停車場は、埃塵《ほこり》をかぶって白かった。そして、油灯《ゆとう》のくすぶる紫いろの隅々に、貧しいトランクの山脈と一しょに、この産業の自由流動と、それによる同色化傾向の濃厚な
次へ
全67ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング