闘牛士はみんな、この牛の耳を乾《ほし》て貯めてる。これをたくさん持ってるほど名声ある闘牛士だ。ベルモントなんかには、何と素晴らしい牛の耳《オレイハ》の蒐集《コレクション》があることだろう!
現にいま、切り離したばかりの血だらけの牛の耳を提《さ》げて、彼は群集へ笑いかけている。
三頭立ての馬が「とうとう死んだ」牛の屍骸《しがい》――マイナス耳――を引きずって走り込む。
砂けむり。
牛の耳の乾物《ほしもの》――私は西班牙《スペイン》まで来て、今日はじめて「牛耳《ぎゅうじ》を取る」という意味が解った。
底本:「踊る地平線(下)」岩波文庫、岩波書店
1999(平成11)年11月16日第1刷発行
※底本には、「新潮社刊の一人三人全集第十五巻『踊る地平線』を用いた。初出誌および他の版本も参照した。」とある。
入力:tatsuki
校正:米田進
2002年12月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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