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沈思する。間。
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安重根 (苦しそうに)しかし、おれは今まで、一心に伊藤を恨み、伊藤を憎んで生きて来た。伊藤に対する憎悪と怨恨にのみ、おれはおれの生き甲斐を感じていたんだ。が、考えてみると、それも伊藤が生きていればこそだ。ははははは、ねえ、柳さん、君は伊藤という人間を見たことがあるか。
柳麗玉 いいえ。写真でなら何度も見たわ。
安重根 (急に少年のように快活に)ちょっと下品なところもあるけれど、こう髯を生やして、立派な老人だろう?
柳麗玉 (微笑)ええ、まあそうね。偉そうな人だわ。でも、あたしあんな顔大嫌い。
安重根 僕は三年間、あの顔をしっかり心に持っているうちに――さあ、何と言ったらいいか、個人的に親しみを感じ出したんだ。
柳麗玉 (かすかに口を動かして)まあ!
安重根 ははははは、やり方は憎らしいが、人間的に面白いところもあるよ。決して好きな性格じゃないが――。
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柳麗玉は無言を続けている。
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安重根 (下の道路に注意を払
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