ギンツェを見て)これは珍しいお説である。(すこし不機嫌そうに)いや、障害、困難のごとき、余輩は老眼のせいか、さらにこれを認めませぬ。日露両国の関係は、この列車の疾走するがごとく、益ます前進しつつあるように見受けられる。(すぐ微笑して)|余は露人を愛す《ヤ・リュブリュウ・ルウスキフ》。(ギンツェと握手する)
[#ここから3字下げ]
伊藤はこの「ヤ・リュブリュウ・ルウスキフ」を棒読みに、不器用に繰り返しながら、順々に握手する。一同微笑する。
[#ここで字下げ終わり]
14[#「14」は縦中横]
[#ここから3字下げ]
パントマイム
同日午前九時、ハルビン駅構内、一二等待合室。
正面中央に改札口ありて、ただちにプラットフォウムに続く。改札口を挟んで、左右は舞台横一面に、腰の低い硝子窓。下手奥、窓の下にストウブを囲んで卓子と椅子二三脚。混雑に備えて取り片づけて、広く空地を取ってある。壁には大時計、列車発着表、露語の広告等掛けあり。下手は食堂《バフェ》の売台、背後に酒壜の棚、菓子の皿などを飾り、上手は三等待合室に通じている。
正面の窓の外はプラットフォウム、窓硝子の上の方
前へ
次へ
全119ページ中115ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング