》の落穗《おちぼ》を拾《ひろ》ふも、暮らすは同じ五十年の夢の朝夕。妻子珍寶及王位《さいしちんぱうおよびわうゐ》、命終《いのちをは》る時に隨ふものはなく、野邊《のべ》より那方《あなた》の友とては、結脈《けちみやく》一つに珠數《じゆず》一聯のみ。之を想へば世に悲しむべきものもなし。
 瀧口|衣《ころも》の袖を打はらひ、墓に向つて合掌《がつしやう》して言へらく、『形骸《かたち》は良《よ》しや冷土の中に埋《うづも》れても、魂は定かに六尺の上に聞こしめされん。そもや御身と我れ、時を同うして此世に生れしは過世《すぐせ》何の因《いん》、何の果《くわ》ありてぞ。同じ哀れを身に擔《にな》うて、そを語らふ折もなく、世を隔て樣を異にして此の悲しむべき對面あらんとは、そも又何の業《ごふ》、何の報ありてぞ。我は世に救ひを得て、御身は憂《う》きに心を傷《やぶ》りぬ。思へば三界の火宅《くわたく》を逃《のが》れて、聞くも嬉しき眞《まこと》の道に入りし御身の、欣求淨土《ごんぐじやうど》の一念に浮世の絆《きづな》を解《と》き得ざりしこそ恨みなれ。戀とは言はず、情とも謂はず、遇《あ》ふや柳因《りういん》、別《わか》るゝや絮
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