こん》の馬場を右手《めて》に見て、何れ昔は花園《はなぞの》の里、霜枯《しもが》れし野草《のぐさ》を心ある身に踏み摧《しだ》きて、太秦《うづまさ》わたり辿《たど》り行けば、峰岡寺《みねをかでら》の五輪の塔、夕《ゆふべ》の空に形のみ見ゆ。やがて月は上《のぼ》りて桂の川の水烟《みづけぶり》、山の端白《はしろ》く閉罩《とぢこ》めて、尋ぬる方は朧ろにして見え分《わ》かず。素《もと》より慣れぬ徒歩《かち》なれば、數《あまた》たび或は里の子が落穗《おちぼ》拾はん畔路《あぜみち》にさすらひ、或は露に伏す鶉《うづら》の床《とこ》の草村《くさむら》に立迷《たちまよ》うて、絲より細き蟲の音《ね》に、覺束なき行末を喞《かこ》てども、問ふに聲なき影ばかり。名も懷《なつか》しき梅津《うめづ》の里を過ぎ、大堰川《おほゐがは》の邊《ほとり》を沿《そ》ひ行けば、河風寒《かはかぜさむ》く身に染《し》みて、月影さへもわびしげなり。裾は露、袖は涙に打蕭《うちしを》れつ、霞める眼に見渡せば、嵯峨野も何時《いつ》しか奧になりて、小倉山《をぐらやま》の峰の紅葉《もみぢば》、月に黒《くろ》みて、釋迦堂の山門、木立《こだち》の間に鮮《
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